カバ
第11回 モナコ・日本芸術祭2017 造形芸術文化賞
この絵は、私が栃木県宇都宮市「宇都宮動物園」(日本)の宿泊体験学習でゾウの糞から作った象糞紙を持ち帰ったことから始まりました。
親しくしている「宇都宮動物園」で、象のウンコからできた紙にいつも餌やりをしているカバの絵を描いたら、評判がよかった。それをベニヤ板に描いてみた。
象牙の密漁や、パーム油を採るために森林が焼かれ、アフリカゾウが絶滅の危機に瀕しており、象糞紙のアート作品の売り上げでゾウの保護活動を行うというものでした。
象糞紙を保育園に持ち帰り、わずか30分程度で書いてもらった作品がカバの原画となります。それは、今も宇都宮動物園に保管されています。とてもよく描けたので、カバを描き直してこの作品となりました。
【総評】
Alain Bazard
にじみの効果を活かした日本画の“たらしこみ”の技法を思わせる背景に、絶妙なバランスでとどまる美しいカバ。
書作品を連想させる表現によって施された模様のドレスをまとったこの獣は、今にも飛びかかってきそうだ。
顔を彩る赤と緑は、カバの表情を損なうことなく、むしろ特徴的な洗練された目つきをより強調している。
非常に現代的な表現スタイルの『カバ』で、吉澤久子は、写真のように自然を捉えるのではない。
独創性にあふれた豊かな感性とユーモアで、自然のカバとは異なる色彩でモティーフを表現しながら、暗示的で生き生きとした作品を生み出している。
この動物に心を奪われた画家は、その感動におぼれることなく、創造的な作業の中にカバとともに潜り込んでいった。
彼女が現実を見失うことなく、自分のアートの世界を持っていることは、この作品の自発的で迷いのないデッサンからも想像できる。天敵を持たないカバは、その強大さにふさわしく、堂々と画面を占拠しているのだ。